「詰将棋」で思考力を鍛えよう!
「詰将棋」で思考力を鍛えよう!
「藤井聡太七段が、史上最年少でタイトル(棋聖)を獲得」
本当にすごいですよね。
若干17歳の若者が、年長者達をなぎ倒していく。
しかも、ただの年長者でなく、タイトルホルダーなど、日本でトップクラスの人達です。
とくに、棋聖戦の相手は、渡辺明三冠。
中学生でプロ棋士になるという偉業を達成した方です。史上5人しかいません。いわゆる、天才。
藤井七段は、その天才を討ち破って「棋聖」のタイトルを獲得しました。
藤井新棋聖は、「大」天才といったところでしょうか。
将棋界のレジェンドである羽生善治九段にも白星を挙げています。
野球で例えるなら、高校球児がプロ野球選手から次々と三振を奪い、「奪三振王」のタイトルを獲得する。そんな感じでしょうか。
普通なら絶対にありえない。そんなことが、今まさに起こっています。(野球界のレジェンドである江夏豊さんや江川卓さんなら実現できたかもしれませんが・・・。つまり、そんなレジェンド達と同じこと、もしくは、それ以上のことを若干17才の若者がやっているということです。)
将棋は、老若男女、実力問わずにできるゲーム
藤井棋聖の活躍もあり、「将棋」の話題をよく耳にするようになりました。
将棋ブームが再燃するかもしれません。
ただ、
「将棋を始めたいけど、将棋ってなんか難しそう・・・」
そんなイメージを持っている人もいるかもしれません。
たしかに、藤井棋聖に勝つのは至難の業(というか一般人にはほぼ不可能)ですが、将棋自体が難しいわけではありません。
ルールは至ってシンプルです。子供でもできます。
実際、私の子供(5才)でもできるようになりました。
子供からしたら、将棋は「おもちゃ」に見えるようです。
「これはどうやって遊ぶの?」
「これはどうやって並べるの?」
「これはどうやって動かすの?」
そうやって遊んでいるうちに、駒の並べ方や動かし方を覚えていきました。
とはいっても、全く強くありません。
私と勝負すれば、当然、私が勝ちます。
でも、負けると悔しそうに「もう1回!」と勝負を挑んできます。
なんだかんだで楽しいようです。
将棋は、藤井棋聖の目の前にあれば「神聖なもの」になるし、子供の目の前にあれば「おもちゃ」になる。
将棋の魅力は、老若男女、実力問わずにできることです。
決して難しいものではありません。
将棋で思考力を鍛えることができる
将棋は「相手の王将を討ち取ったら勝ち、自分の王将が討ち取られたら負け」。
そんなゲームです。
相手に勝つためには、
「相手がどのように動いてくるのか?」
「それに対してこちらはどのように動けばいいのか?」
そんなことをひたすら考え続ける必要があります。
それを「広く深く」考えられる人がプロ棋士で、「狭く浅く」しか考えられない人がアマチュア棋士、といったところでしょうか。
将棋の面白いところは、やればやるほど「広く深く」考えられるようになることです。
思考力がどんどん鍛えられていきます。
私自身がそうでした。
私はアマチュア三段の資格を持っています。
ですが、将棋を始めた頃(小学生高学年の頃)は、「3手詰将棋」すら苦戦していました。
将棋は、「1回」駒を動かすことを「1手」なんて呼びます。
「3回」駒を動かせば「3手」。
つまり、「3手詰将棋」とは、「3回」駒を動かしたのちに、相手の王様を倒す(逃げ場がないように追い詰める)。そんな将棋です。
初心者向けの将棋でもあります。
不思議なもので「3手詰将棋」を繰り返していると、どんどん解くスピードが上がっていきます。
そして、そのうち「5手詰将棋」が解けるようなり、そのスピードも上がっていく。
そして、「7手詰将棋」が解けるようになり、「9手詰将棋」が解けるようになる。
高校生の頃には「15手詰将棋」まで解けるようになりました。(今は解けるかわかりませんが・・・)
この「詰将棋」は、手数が増えるほど「広く深く」考える必要があります。
つまり、詰将棋を繰り返すことで、私の思考力が「広く深く」考えられるように成長していったということです。
ただ、正直なところ、「15手詰将棋」にもなると、私レベルの実力では「第1手」に何をすべきかが全くわかりません。
色んな駒を頭の中で動かしてみて「これはダメ」「あれもダメ」そんなことをひたすら考え続ける必要があります。
「これならいける・・・?」
と思ったものも9手目くらいでやっぱりダメで、次のパターンへ。
そんなことを繰り返してやっと解けます。かなり時間がかかります。
ちなみに、藤井棋聖は「41手詰将棋」をたった25秒で解いたそうです。
私が苦戦していた「15手詰将棋」なら、おそらく5秒以内に解いてしまうのではないでしょうか。
いやはや、もはやコンピューターレベルの頭脳の持ち主ですね・・・。
そんな藤井棋聖も、最初からそんなに速くは解けなかったはずです。
実際、「詰将棋解答選手権」で初優勝したのが小学校6年生のとき。小学校2年生から5年生の間も出場はしているものの、優勝には手が届いていません。
そもそも、プロ棋士も参加する大会で小学生が優勝すること自体、とんでもないことなんですが・・・。
ただ1つ言えるのは、藤井棋聖も、時間とともに思考力を成長させていったということです。つまり、「思考力は鍛えられる」ということです。
将棋の思考力は、日常生活や受験、仕事にも役立つ
この「将棋の思考力」。
当然、日常生活や受験、仕事にも役立ちます。
例えば、日常生活なら「2手先」まで読むことができれば、たいていの場合、トラブルなく過ごせます。
自分の行動(1手目)が、相手にどのような行動を起こさせるか(2手目)を読めばいいわけです。
つまり、「2手目」が自分にとって有利になるように、「1手目」を打てばいい。
例えば、相手が喜ぶものをプレゼントをすれば(1手目)、相手の次の行動(2手目)は好意的なものになるはずです。
逆に、相手を不快にさせれば(1手目)、相手の次の行動(2手目)は攻撃的なのものに変わってしまいます。
「2手先」まで読めるようになれば、人間関係トラブルは格段に減るはずです。
「2手先を読むだけ」
たったそれだけのことなのですが、決して簡単なことではありません。
相手は人間なので、色んな「手」を返してきます。なかなか思い通りにはいきません。
「広く」考える必要がありますし、場合によっては「深く」考える必要があります。
そんなときに「将棋の思考力」が役に立ってくれます。
受験なども同じです。
難しい問題になればなるほど「広く深く」考える必要があります。
とくに数学は「詰将棋」によく似ています。
出題された問題に対して「1手」「2手」と思考を進めていき、答えを導き出す。
私は将棋で思考力を鍛えていたせいか、数学が得意でした。
数学だけは、中学・高校ともに学年10番以内を常にキープしていたと記憶しています。(ちょっと記憶があいまいですが・・・)
ちなみに、藤井棋聖も数学が得意らしいです。(ウィキペディア情報)
日常生活や受験だけでなく、仕事でも役立ちます。
「2手先」まで読めればトラブルは少なくなりますし、もっと先まで読めるようになれば、ビジネスも成功しやすくなります。
「将棋の思考力」はあらゆるところで役に立ちます。
「思考力」は鍛えないと身につかない
「思考力」は鍛えないと身につきません。
普段の生活を思い浮かべて頂くとわかりやすいと思います。
普段から「7手先」「9手先」を考えて行動しているでしょうか?
おそらく、そんなことはないと思います。
「広く深く」考えるためには、かなり頭を使いますし、時間もかかります。
毎回そんなことをしていたら、体がもちません。
普段は「1手先」まで、場合によっては「2手先」「3手先」くらいまで考える。
その程度ではないでしょうか?
しかし、普段「3手先」しか考えてない人が、いきなり「9手先」を読めるようにはなりません。
より「広く深く」考えられるようになるためには、訓練が必要です。
思考力を鍛えるには「詰将棋」がおススメ
思考力を鍛えるには「詰将棋」がおススメです。理由は次の3つです。
1つ目の理由は、将棋のルールがとてもシンプルだから。先述のように子供でもできます。
2つ目の理由は、詰将棋はそこまで難しくないから。詰将棋はすべての駒を使わずに、限られた駒だけを使用します。本来の将棋であれば、すべての駒の動きを考える必要があるので、3手先を読むだけでもかなりたいへんです。それに比べると、詰将棋はかなりラクです。
3つ目の理由は、詰将棋は楽しいから。詰将棋は、答えが1つしかありません。解けたときは「やった!解けた!」そんな爽快感があります。「よし!次の問題も解いてみよう!」。そんな気力が湧いてきます。楽しみながら思考力を鍛えることができます。
思考力を鍛える方法は、もちろん、詰将棋だけではなく、他にも色々あります。例えば、「数学」でも鍛えることができます。
ですが、数学の場合、公式などを覚えなくてはいけません。公式の数は、数えきれないほどありますし、その中から最適な公式を選び出すのは、なかなか骨が折れます。
それに、解法も1つだけではなく、色んな解法があります。答え合わせをするのにも一苦労です。
それに比べると「詰将棋」はとりかかりやすいのでおススメです。
将棋だけでは不十分
ただ、将棋だけでは不十分です。
例えば、藤井棋聖が「東大の入試問題(数学)」を解けるかといえば、おそらく、現時点では解けないはずです。
いくら天才といえども、公式などの「基礎知識」を身につけなければ解くことはできません。ただ、藤井棋聖が本気で勉強すれば余裕で東大に合格できるとは思いますが・・・。
「思考力」は、「基礎知識」があって初めて活きます。
人間関係において「先読み」する場合も、「自分の行動に対して相手がどうような行動を取り得るのか」といった「基礎知識」を事前にストックしておく必要があります。
その量が多くなればなるほど「広く深く」考えられるようになります。
イメージは「ピラミッド」でしょうか。
高いピラミッドを作りたければ、大きな土台が必要です。
土台が小さければ、ピラミッドは崩れ落ちてしまいます。
「思考力」も同じで、土台となる「基礎知識」が少なければ、「広く深く」考えることができません。
「基礎知識」は、本を読む、人に聞く、ネットを見る、実際に経験するなどの方法で身につけることができます。
【余談話1】藤井棋聖の対局は面白い
将棋中継を見たことありますか?
実は、私は最近まで見たことがありませんでした。
正確には、子供の頃に少しだけ見たことがあるのですが、つまらなすぎて、すぐにチャンネルを変えていました。
なぜつまらないかといえば、私のレベルでは、プロ棋士が何を考えているのか全くわからないからです。
わけがわからないところに「歩」を打ったりするわけです。意味不明すぎて全く面白くありませんでした。
と、今までは思っていました。
ですが、父から「藤井七段の対局は、面白いから見た方がいい」と勧められ、「藤井七段と渡辺三冠の棋聖戦第4局(藤井七段が初タイトルを獲得した対局)」を実際に見てみました。
すると・・・
たしかに面白い。
昔とは全然違いました。
一番大きな変化は、AIが候補手(最善手など)を予測してくれるようになったことです。
喜ぶべきなのか、悲しむべきなのかはよくわかりませんが、人間はAIに将棋で勝てなくなってしまいました。
おそらくですが、藤井棋聖ですら、最新のAIには勝てないと思われます。
つまり、AIの指す手が、人間にとっての「最善手」。正解といえます。(AIが進歩すれば、さらに「良い手」が見つかる可能性はありますが・・・。)
そのAIが「最善手」や「その次に良い手」などを表示してくれます。
しかも、解説者が「その手がなぜ良いのか」を説明してくれます。
AIと解説者の方のおかげで、私でもプロ棋士のハイレベルな将棋に参加できるようになりました。
そのせいか、現場のピリピリした雰囲気を画面越しに感じられるようになりました。画面の向こう側に、藤井棋聖と渡辺二冠がただ座っているだけの映像なんですが、迫力満点でした。
さらに面白いことに、藤井棋聖や渡辺二冠は、AIの予測した最善手やそれに近い手をズバズバと打ってきます。
解説者の方が思いつかないような手をズバズバ打ってきます。
それだけでも見応えがあります。鳥肌ものです。
一番「凄いな」と感じたのは、藤井棋聖は持ち時間が少なくなっても絶対に悪手を打たないことです。
考える時間が少なくなれば、悪手を打ってもおかしくないのに、それが全くない。その気配すらない。むしろ、最善手を連発してくる。
1分将棋なら、藤井棋聖に勝てる人はこの世に存在しないのではないか。そんな凄みがありました。
そう考えると、藤井棋聖の対戦相手が、若干気の毒にも思えます。
持ち時間が少なくなれば、勝機がなくなってしまうので、序盤や中盤で時間を大量に使うわけにはいかない。
かといって序盤や中盤で手を緩めればあっという間に負けてしまう。
最初から最後まで一瞬も気を抜けない。
100メートルダッシュを全力で100本連続で続けないといけない。
そこまでして超一流の棋士が、藤井棋聖に勝てるかどうか。そんな印象を受けました。
「藤井七段 VS 渡辺三冠」
この対決は、なんとなくですが、野球の「松阪大輔選手 VS イチロー選手」の初対決に似ているように感じました。
両者ともに超一流の選手です。このときの対決は、高卒1年目の松坂選手が、5年連続首位打者のイチロー選手を3連続三振にとるという、これまた信じられない結果で幕を閉じました。
今回の将棋対決は、それと同じような雰囲気を感じました。歴史に残る一戦であることは間違いありません。
その対局をこの目で見れたことは本当に幸せなことだと思いました。
また、今回の対局で藤井棋聖と渡辺二冠のファンになってしまいました。
藤井棋聖にも勝ち続けて欲しいし、渡辺二冠にもリベンジしてもらいたい。
次の対局がとても楽しみですが、どちらを応援したらいいのか迷ってしまいます。
【余談話2】固定概念にとらわれてはいけないと思った件
余談話をもう1つ。
子供と将棋をやっている際に「固定概念にとらわれてはいけないな・・・」と気付かされました。
将棋には「飛車(ひしゃ)」と「角(かく)」という駒があります。
将棋の駒の配置は、基本的に左右対称なのですが、「飛車」と「角」だけは異なります。
「飛車」は自分から見て右側に、「角」は左側に配置します。
でも、これは子供にとっては少し難しいようです。
私が自陣に駒を並べると、子供もそれを真似して駒を並べます。
でも、私の駒の配置を見ながら駒を並べると、「飛車」を子供から見て左側に、「角」を右側に並べてしまいます。
鏡に映したように並べてしまうわけです。
私と同じように並べるためには、頭の中で盤面を半周させなくてはいけません。
これは子供にとってはなかなか難しい作業です。
そこで、子供にどこが間違っているか考えてもらうことにしました。
習うより慣れよ、といった感じでしょうか。
でも、やはりなかなか気付くことができません。
そこで、妻にもいっしょに考えてもらうことにしました。ちなみに、妻は将棋をやったことがありません。
さすがに妻はすぐに気付いたのですが、そのときの一言が衝撃的でした。
「あっ!『かどゆき』が逆!」
むむむ?
かどゆき???
一瞬何を言っているのかさっぱりわからなかったのですが、駒を見て気付きました。
「角」の駒には、「角行」と書かれています。
つまり、「角(かく)」のことを「かどゆき」と呼んでいたのです。
「角行」の本当の読み方は「かくぎょう」です。
「かどゆき」には意表を突かれてしまったのですが、よくよく考えると「角行」のことを「かく」と呼んでいることの方が不自然なことに気付きました。
「飛車」は「ひしゃ」と呼びます。「ひ」とは呼びません。
「桂馬」も「けいま」と呼びます。「けい」とは呼びません。
ただ、一方で、「歩兵」「金将」「銀将」のことは「ふ」「きん」「ぎん」と呼びます。
文字通りに呼んだり、文字通りに呼ばなかったりと統一感のない呼び方であることを、いまさらながら再認識しました。
それに「角行」を「かくぎょう」と読むのは若干違和感があります。だからこそ「かく」という呼び名が定着したのではないかと思います。
そう考えると「かくぎょう」よりも「かどゆき」の方が自然な気もします。(まあ、それはそれでちょっと違和感がありますが・・・)
少なくとも私は、これまでは「角行」のことを「かくぎょう」と呼んだことはありません。
というより、妻に「かどゆき」と言われて初めて
「あれ?角行ってなんて読むんだろう?」
という思考に至り、「かくぎょう」と読むことを知りました。
恥ずかしながら、今までは「角行」を「かく」だと勝手に思い込んでいました。
もちろん間違いではないのですが、何も考えずに「かく」と呼んでいたことを
「なんか固定概念に縛られてるな・・・」
と思った次第です。
みんなが「かく」と呼んでいるから「かく」だと思い込む。
このような考え方では、フェイクニュースにも騙されてしまう。そんな気がしました。
これからは固定概念に縛られないように気を付けよう。「かどゆき」から、色んなことを考えさせられました。
まとめ
思考力を鍛えるためには「詰将棋」がおススメです。
やればやるほど、思考力が「広く深く」なっていきます。
初心者の方は、「3手詰め」がおススメです。
そこまで難しくないので、必ずできるようになります。また、解けたときの爽快感は格別です。
楽しみながら思考力を鍛えることができます。
それに、藤井棋聖の活躍のおかげで、これから将棋ブームが来るかもしれません。
そういった意味でも将棋で思考力を鍛えることをおススメします。
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